2025/10/01
音楽業界コラムvol.12 ネットアーティストに必要なスキルと、それを身につける方法

今、音楽活動のスタイルは大きな変化の最中にあります。
以前は、音楽活動といえばプロダクションに所属して、スタジオでレコーディングしたCDをレコード会社から発売し、ライブ活動を通して世の中に広めていく……そんなスタイルが主流でした。 もちろん、今でもその形は続いていますが、インターネットと配信サイトの発展によって、新しいスタイルの音楽活動が急速に広がっています。
それが「ネット発のアーティスト活動」です。
低価格で高機能なDTM機器の普及により、個人でも自宅で楽曲を制作できるだけでなく、 YouTubeやニコニコ動画、TikTok、Spotify、Apple Musicなどの動画・音楽配信サービスを活用して、世界に向けて作品を発表できる時代になりました。
ボカロPや歌い手、ネット配信シンガーといった存在は、若い世代の憧れの的です。
では、こうした活動にはどんな素養やスキルが必要なのでしょうか。
従来型のアーティストに必要だったスキル
従来型アーティストに求められたのは、まず第一に、演奏力や歌唱力といった純粋な音楽的スキルです。 楽器の練習を積み重ね、音楽理論を学び、ライブの場数を踏んで実力を磨くことが重視されました。 さらに、事務所やレコード会社と契約するためには、プロデューサーや業界関係者に認められる必要があり、人脈づくりやオーディションでアピールする能力も重要でした。 ライブツアーやテレビ出演を通してファンを獲得するためには、体力やステージ度胸も欠かせません。 つまり、従来型のアーティストは「音楽を表現する力」と同時に、「現場で観客を惹きつける存在感」が強く求められていたといえます。
ネット発アーティストに求められる素養
一方で、ネット配信を中心に活動するアーティストには、少し異なる資質が必要です。
●セルフプロデュース力
ネット活動では、作品を世に出す最初のきっかけは自分自身です。 楽曲制作から動画編集、ジャケット画像のデザイン、さらにはSNSでの告知まで、自分で考えて行動する力が必要です。 従来はプロデューサーやスタッフが担っていた役割を、個人が広くカバーすることになります。
●デジタルスキル
DAW(Digital Audio Workstation)と呼ばれる音楽制作ソフトを使いこなし、録音やミックスを行う技術は必須です。 ボカロPであれば、ボーカロイドの調声やエフェクトの扱いに慣れる必要があります。 歌い手として活動するなら、自宅での録音環境を整え、品質のよい音を届けられるよう工夫することが求められます。
●発信力とコミュニケーション能力
ネットアーティストにとって、作品を発表するだけではファンはなかなか増えません。 XやInstagram、配信アプリを通じてリスナーとやり取りしたり、コメントに反応したりすることで、親近感を持ってもらうことが大切です。 従来型のアーティストよりも、ファンとの距離が近いのがネット活動の特徴です。
●継続力と自己管理能力
ネットは情報の流れが速く、新しいコンテンツが次々と登場します。 その中で活動を続けるには、定期的に作品を発表する継続力が必須です。 モチベーションの維持やスケジュール管理も、個人活動では大きな課題となります。
従来型との比較で見える違い 従来型アーティストとネット発アーティストの違いをまとめると、次のようになります。
●活動の場:従来はライブハウスやCDリリース中心 → ネットでは動画サイトや音楽配信が主戦場
●デビューの形:従来は事務所やレコード会社を通す → ネットは個人で発信可能
●必要スキル:従来は演奏力やステージ力 → ネットはデジタル制作力や発信力
●ファンとの距離:従来は遠くから応援される存在 → ネットではコメントやSNSで直接交流 このように、ネット活動は「個人で完結できる自由さ」がある一方、全てを自分で担う負担の大きさもあります。
ネットアーティストとして成功するために ここまで述べてきたことを踏まえて、ネット発アーティストをめざすにはどんな準備をすればよいかを考えてみましょう。
●音楽の基礎を学ぶこと
どんなにデジタル技術が進んでも、メロディやリズムの魅力は普遍的です。 楽器や歌の練習を重ね、音楽理論の基礎を学んでおくことは大きな強みになります。
●制作環境を整えること
パソコンやオーディオインターフェース、マイクなど最低限の機材は必要です。 最初は安価なものでもかまいませんが、少しずつレベルアップしていく姿勢が大切です。
●発信を楽しむこと
SNSや動画投稿を「義務」ではなく「楽しみ」として取り組むことが長続きの秘訣です。 自分の作品を発表するだけでなく、他のクリエイターにコメントしたりコラボしたりするのも有効です。
●仲間を作ること
ネット活動は孤独になりがちです。 同じ志を持つ仲間と交流することで、互いに刺激を受け、活動を続けやすくなります。
専門学校でスキルアップをめざす
「音楽に関わる仕事がしたい」という共通の目標を持ちながら、さまざまな専門分野について学ぶ学生たちが集う専門学校は、 ネットアーティストに必要な総合力を身につけるにはうってつけの環境です。
神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校で開設している「ネットアーティスト&クリエーター本科コース」では、 楽曲制作、エンジニアリング、配信テクニック、マーケティングなど、多方面のスキルを4年間でじっくり磨いていきます。
また、学生がオリジナル楽曲をプレゼンテーションし、配信までを目指す企業プロジェクトを実施。学生は楽曲配信に向けてディレクターと共にプリプロダクションを経てレコーディングを行います。
ネット発アーティストは、従来型アーティストと比べて敷居が低く自由度も高い一方で、大きな責任と表裏一体でもあります。
それを理解した上で、「音楽」そのものを楽しみながら続けていくことが、成功への第一歩といえるでしょう。 




